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漫画『アオアシ』に学ぶ、思考の解像度を上げる「言語化」の技術 - AI時代のソフトウェア開発を加速させるメタ認知とは

2025年8月17日

こんにちは。AI時代をリードするソフトウェアアーキテクトの山田太郎です。私は日々の業務で、大規模言語モデル(LLM)などのAI技術を駆使してビジネス価値を創出することに情熱を注いでいます。技術とビジネスを繋ぐ上で、「なぜ作るのか」という問いは常に私の中心にあります。

さて、今日は少し趣向を変えて、私が最近夢中になっているサッカー漫画『アオアシ』から得た、ソフトウェア開発、ひいてはプロフェッショナルとしての成長に不可欠なスキルについてお話ししたいと思います。それは「言語化」の技術です。

『アオアシ』で描かれる「言語化」の重要性

『アオアシ』をご存知でしょうか。愛媛の弱小中学サッカー部のエースだった主人公・青井葦人(あおい あしと)が、Jリーグのユースチーム「東京シティ・エスペリオンFC」のセレクションを受け、プロを目指して成長していく物語です。

この漫画が他のスポーツ漫画と一線を画すのは、その圧倒的な戦術描写と、選手たちの思考プロセスへの深い洞察にあります。特に印象的なのが、主人公のアシトが監督やコーチから、ことあるごとに「今のプレーを言語化してみろ」「なぜそう判断した?」と執拗に問われるシーンです。

当初、アシトは感覚的にプレーする天才肌の選手でした。しかし、より高いレベルで戦うためには、自分のプレー、味方の動き、敵の意図、ピッチ全体の状況を客観的に捉え、それを言葉で説明できる能力、すなわち「言語化」能力が不可欠だと突きつけられます。彼はこの壁にぶつかり、苦しみながらも、自分の思考を言語化する訓練を重ねることで、戦術理解度を飛躍的に高め、選手として覚醒していくのです。

なぜ「言語化」が成長を加速させるのか? - ソフトウェアアーキテクトの視点から

このアシトの成長プロセスは、我々ソフトウェアエンジニアやアーキテクトの成長曲線と驚くほど酷似しています。なぜ、言語化がこれほどまでに重要なのでしょうか。私は、以下の3ステップのサイクルが生まれるからだと考えています。

1. 言語化による「暗黙知」の「形式知」への変換

優れたエンジニアは、しばしば「なんとなくこの設計の方が良い」「このコードは何か嫌な匂いがする」といった直感、つまり「暗黙知」を持っています。しかし、その「なんとなく」のままでは、他の誰にも共有できず、自分自身でさえなぜそう感じたのかを深く理解できません。

言語化とは、この暗黙知に名前をつけ、構造を与え、論理的な説明を加えることで「形式知」に変換するプロセスです。例えば、「なんか嫌な感じがするコード」を「このモジュールは複数の責務を持ちすぎており、凝集度が低い。変更時の影響範囲が予測しづらい」と言語化することで、初めて具体的な課題として認識できるようになります。

2. 抽象化による「再現可能なパターン」の発見

一度言語化され、形式知になると、私たちはそれを他の事象と比較・分析できるようになります。

  • 「AプロジェクトのAPI設計で起きた問題は、Bプロジェクトのバッチ処理の課題と根源が同じだ」
  • 「このUIコンポーネントの複雑さは、以前取り組んだデータパイプラインの依存関係の問題と似ている」

このように、個別の事象を言語化することで、その背後にある共通の構造や原則、つまり「抽象的なパターン」を見つけ出すことができます。これは、ドメイン駆動設計(DDD)におけるユビキタス言語の構築や、GoFのデザインパターン、クリーンアーキテクチャのような設計思想の理解と本質的に同じ行為です。

3. 再現性による「成長」と「応用力」の獲得

抽象化されたパターンは、強力な武器になります。なぜなら、再現性を持つからです。次に未知の課題に直面したとき、私たちはゼロから考える必要はありません。手持ちのパターンの中から、「この状況には、イベント駆動アーキテクチャのパターンが適用できるかもしれない」「ここはマイクロサービスに分割するよりも、まずはモジュラモノリスで責務を分離するのが適切だろう」と、仮説を立ててアプローチすることができます。

この「言語化 → 抽象化 → 再現」のサイクルを回し続けることこそが、個人の技術的成長のエンジンであり、チーム全体の設計能力や問題解決能力を底上げする鍵となるのです。

AI時代だからこそ求められる、人間の「言語化」能力

この話は、LLMや生成AIが台頭する現代において、さらに重要性を増しています。

AIを「魔法の箱」ではなく「強力な課題解決ツール」として使いこなすためには、私たちがAIに対して極めて正確かつ具体的な指示を出す必要があります。今話題のプロンプトエンジニアリングは、まさに思考の言語化そのものです。

  • 曖昧な指示: 「いい感じのECサイトの推薦ロジックを考えて」
  • 言語化された指示: 「Pythonと協調フィルタリングアルゴリズムを用いて、ユーザーの過去の購買履歴と閲覧履歴に基づき、類似ユーザーが購入している未購入商品を推薦するAPIのコードを生成してください。入力はユーザーID、出力は商品IDのリストとします」

後者の指示を出せるかどうかは、ビジネス要件をどれだけ深く理解し、それを技術的な仕様に分解・言語化できるかにかかっています。AIは私たちの思考を拡張するパートナーですが、その思考の出発点が曖昧であれば、得られる結果もまた曖昧なものになってしまうのです。

指導者として、チームの「言語化」を促す

『アオアシ』の福田監督のように、私もテックリードとして、チームメンバーに「なぜ?」と問いかけることを意識しています。それは詰問ではなく、彼ら自身の思考を深め、言語化する機会を作るためのコーチングです。

コードレビューは、まさにその実践の場です。「この実装にした意図は?」「他に検討した選択肢はあった?」といった対話を通じて、コードの裏にある設計思想を言語化し、共有する。このプロセスが、チームの文化となり、集合知を高めていくのです。

まとめ

漫画『アオアシ』が描くのは、単なるサッカー選手の成長物語ではありません。それは、あらゆるプロフェッショナルが壁を乗り越え、成長するための普遍的な法則を示唆しています。

その核心にあるのが「言語化」です。

自らの思考を言語化し、抽象化されたパターンを見出し、それを新たな課題に応用する。このサイクルこそが、複雑で変化の速い現代において、私たちソフトウェアエンジニアが価値を創出し続けるための最も重要なスキルの一つだと、私は確信しています。

「なぜ作るのか」「なぜこの技術を選ぶのか」。

常に自問し、思考を言葉に刻み込むこと。それが、AIを最高のパートナーとして、これまで解決不可能だった課題に挑戦する未来を切り拓くと、私は信じています。

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